アートセラピー(芸術療法)の特徴

アートセラピーの「アート」は特別なものではありません。

色鉛筆やクレヨンで色をぬるだけでいいし、粘土をこねるだけでもいい。紙をちぎって貼り付けるだけでもOKです。

うまく描く必要なんてありません。人に見せなくてもOK。表現したくなければしなくてもいい。それがアートセラピーです。

ここではアートセラピーの特徴を詳しく紹介していきます。

言葉がなくても表現できる

アートセラピーの最大の特徴は、言葉にできない心の状態をアートを通して表現できることです。

言葉にするのが難しい激しい感情やモヤモヤした思いをそのまま表現することができ、言葉のやりとりより素直な心の交流が生まれます。

心の深部につながりやすい

アートセラピーでは、画材のリラックス効果(治療的退行)もあり、心の奥に抑圧された思いや感情が表現として出てきます。

無意識からのメッセージに気づくことができるのは利点ですが、危険性もあるので注意が必要です。

※アートセラピーの危険性についてはアートセラピー(芸術療法)とはをご覧ください

作品に心的世界が表れる

アートセラピーでは、自分の内的世界を「作品」という形で外に出すことができます。

心の状態が作品という目に見える形になることで人に伝えやすくなり、作品を介した他者との心の交流が可能になります。

また、作品を通して自分の内面を客観的に見られるようになり、距離をおいて感情を整理することができます。

適用範囲が広い

アートセラピーは言葉がなくても取り組めるので、言葉のやりとりが苦手な子どもから高齢者まで幅広い年齢層に適用することができます。

発達障害や依存症、重度の精神障害などの心理療法で使われるほか、人間関係の悩みや気分転換といった広義のアートセラピーとしても有効です。

※広義と狭義のアートセラピーの意味についてはアートセラピー(芸術療法)とはをご覧ください。

分析しない

アートセラピーでは表現された作品や表現の仕方そのものに、表現者の心の状態が象徴的に表れていることが多いです。

しかしそれを読み解き、分析することがアートセラピーの目的ではありません。それは心理査定(心理テスト・描画テスト)の範疇です。

評価しない

アートセラピーでは、技術的な「うまい・へた」で作品を評価することはありません。

分析や評価から離れたありのままの自己表現こそ、人の個性を伸ばし、心の健康と成長につながります。

表現しなくてもOK

アートセラピーでは、表現することは強要されません。表現してもいい・表現しなくてもいいという自由な環境の中で、表現しないこともひとつの心の表現です。

クライエント主体

セラピーというと「治療を受ける・癒やされる」という受け身のイメージがあるかもしれませんが、アートセラピーはクライエントが自ら創造し表現する、クライエント主体の能動的なセラピーです。

セラピストはサポート役

セラピストは、アートセラピーの環境を整え、受容的・共感的な態度でクライエントに寄り添い、表現された作品を共に味わいます。

アートセラピストの役割は、クライエントがアートという手段を通じて、自分の力で問題解決への気づきを得ていくためのサポートをすることです。

参考文献・おすすめの本

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高橋依子、牧瀬英幹/描画療法のさまざまな実践について、章ごとに1つずつ徹底解説。適応の見極め、導入の手順、描画の解釈などの基本的な進め方、細かい工夫や注意点などを、事例をあげながら具体的・実践的に説明する。