アートセラピーの資格と仕事

日本にはアートセラピーの国家資格や公的資格はありません。
あるのは民間の団体が認定している民間資格だけ。日本にはまだアートセラピストという国が定めた資格はないのです。

それでは誰がアートセラピーを行っているのでしょうか?
ここではアートセラピーを行っている人をアートセラピストと定義して、日本の各職業や資格とアートセラピーとのつながりについて紹介していきたいと思います。

また海外でのアートセラピストの資格や職業事情についても少しだけ紹介します。

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日本のアートセラピー事情

日本の医療現場では、アートセラピーの専門家が常駐していることは極めて少なく、精神科医や臨床心理士・心理カウンセラーなどの医療従事者が心理療法の一環としてートセラピー(芸術療法)を行っているケースが多いです。

民間のアートセラピスト養成講座も増えていますが、養成講座を修了しただけで医療の仕事に携わることは難しく、福祉施設や、個人の教室、ヒーリングサロンなどでアートセラピーの活動をしているセラピストが多いです。

また絵画教室によっては絵を上手に描く技法を教えるのではなく、自由に絵を描く場を提供するというアートセラピー的な教室を開かれている先生もいらっしゃいます。

国家資格・公的資格・民間資格のちがい

ここで日本の資格の種類について簡単に説明します。

国家資格

国家資格は国が発行している資格で、その職域は法律に守られています。
例)医師、弁護士、あんま師、作業療法士

公的資格

公的資格は国の各官庁が後援している資格で、法律による権限はありませんが資格への信頼の高いものです。
例)簿記検定、色彩検定

民間資格

民間資格は民間の学校や団体が発行している資格で、資格の質はピンキリです。
例)アロマセラピスト、リフレクソロジスト、TOEICなど他多数

民間資格は玉石混合

このように、一口に資格といってもいろいろあります。

国家資格や公的資格なら国が認めた資格なので信頼ができます。しかし民間資格の場合、無条件に信頼するわけにはいきません。TOEICのようにかなり信頼度の高いものもあれば、学校を卒業してライセンス料を払うだけでもらえてしまう資格までいろいろとあるのです。

そして今現在アートセラピストの資格はこの民間資格しかありません。資格としての知名度もそれほど高くはないといえるでしょう。

つまり「アートセラピーの資格を持っている」と言っても、その質は資格を発行した民間団体からしか保証されていないのです。アートセラピストの力量は他の国家・公的資格の有無、経歴、そして自分の目で確かめるしかありません。

アートセラピーに関連する資格・職業

精神科医

【国家資格】
精神神経科の医師であり、薬の処方もします。
カウンセラーとの一番の違いは「病気の診断・薬の処方ができる」という点です。
心理療法の一つとして芸術療法(アートセラピー)を行います。
精神科医になるためには大学の医学部を卒業し、国家資格をとり、精神科での2年間の研修が必要です。

作業療法士(OT:Occupational Therapist)

【国家資格】
心身に障害を負った人を対象に手芸や工芸、造園などの作業を通して社会適応、リハビリテーションを促します。日本ではアートセラピストに最も近い国家資格と言われます。

ただ作業療法は、アートセラピーと比べると、心より身体へのアプローチが多いです。

作業療法士になるためには、高校卒業後、作業療法過程がある専門学校・短大・大学のいずれかを卒業し、国家資格をとります。学校はいずれも3~4年です。

作業療法士の就職先には、精神神経科などの病院、老人福祉施設、身体障害者厚生施設などがあります。

カウンセラー(臨床心理士)

【民間資格】
カウンセラーという国家・公的資格はありません。
臨床心理士の知名度もだいぶ高まってきたので、今後は「カウンセラー=臨床心理士」という図式になっていくでしょう。

臨床心理士の主な仕事は、心理療法(カウンセリング)と心理査定(アセスメント)です。心理査定とは、心理テストや面接、周囲の状況からクライエントの心の状態を知ることです。

心理療法には様々な流派・やり方があり、クライエントに最も適した方法がとられます。その方法の一つに芸術療法(アートセラピー)が含まれます。

臨床心理士になるためには、文部科学省の指定する指定大学院を卒業しなければいけません。指定大学院の数は年々増えてきていますが、それ以上に志願者数も増えているので、大学院入試はかなり厳しい倍率になっています。

そして大学院を卒業した後の就職先も少なく、かなりの倍率になっているようです。臨床心理士の就職先としては、病院の精神神経科や心療内科、スクールカウンセラーや学生相談室、児童相談所、家庭裁判所、障害者施設などがあります。

海外でのアートセラピストの資格・仕事

ドイツではアートセラピストという国家資格があります。アメリカでは国家資格こそないものの、認知はかなりされていて医療現場で医師やソーシャルワーカーとチームを組んで仕事をしています。

日本の心理学はアメリカに比べて10年ほど遅れていると言われています。本格的にアートセラピーを学びたいのならアメリカやドイツへの留学というのも視野にいれてください。

卒業後はそのまま留学先に残ってアートセラピストとして働いたり、日本に戻ってきてアートセラピストとして活躍されている方も増えています。

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