描画テストとは

描画テストとは、クライエントの人格や心理状態を把握するために行われる心理テストのひとつです。

鉛筆・クレヨン・消しゴム・画用紙などの絵を描くための道具を用意し、描かれた絵や、絵を描いている時の様子を通して、クライエントの内面にふれていきます。

描画テストを通して、クライエントの状態・状況を把握することで、援助の仕方を考えたり、行動の予測をしたり、治療効果を測定することに役立てることができます。

言葉にできない心理状況が現れる

絵を通すことで、言葉ではうまく表現できない心の動きを知ることができます。

また、言語能力に依存しないため、言葉が未発達な子どもや、言語によるコミュニケーションのむずかしいクライエントにも実施することができるメリットがあります。

描画テストのテーマ

描画テストでは、「木・家・人物」のように具体的な課題が与えられたり、「不快なもの」のように抽象的な課題が与えられたり、課題は与えられず自由に描くこともあります。

どのようなテーマがふさわしいかは、心理テストの目的や、クライエントと心理テストの相性、セラピストのスキル、クライエントとセラピストの関係性やテストを行う環境などをふまえて考えられます。

描画テストは「投影法」の一種

心理テストは、「質問紙法・投影法・作業検査法」に分類されますが、描画テストは投影法のひとつです。

それぞれの特徴を知ることで、描画テストの長所と短所を見ていきましょう。

質問紙法

質問項目にクライエントが答え、回答結果を点数化する事によりパーソナリティを把握する心理テストです。クライエント自らが自分の意思で答えるため、自己認知された自己像が出やすい傾向にあります。

解釈にセラピストの主観が入らず、容易に実施できるという長所の反面、クライエントの言語能力に左右されたり、回答を意図的に操作できるという短所があります。

・YG性格検査(矢田部-ギルフォード性格検査)
・MMPI(ミネソタ多面人格目録)
・エゴグラム
など

投影法

絵や写真などのあいまいな刺激に対する、クライエントの反応からパーソナリティを把握する心理テストです。クライエント自らも言語化できていない、より深い内面が出やすい傾向があります。

回答の操作が難しく、総合的でより深い内面を把握しやすいという長所の反面、実施に時間と習熟が必要なこと、自由度が高く客観的な評価が難しいこと、絵の解釈にセラピストの主観や感性が入りやすいという短所があります。

・描画テスト(バウムテスト、HTPテストなど)
・ロールシャッハテスト
・TAT(絵画統覚検査)
など

作業検査法

クライエントが一定の条件の中で特定の作業を行い、その結果からパーソナリティを把握する心理テストです。

容易に実施でき、回答の操作も難しいという長所の半面、クライエントの限られたパーソナリティしか把握できないという短所があります。

・内田クレペリン精神検査
・ベンダーゲシュタルトテスト
など

~テストバッテリー~
心理臨床の場面では、クライエントの人格や心理状態を総合的に把握するために、複数のテストを組み合わせて実施されることが多いです。

描画テストで大切なこと

絵を描く前のラポール(信頼関係)

描画にはクライエントとセラピストの関係性が大きく影響します。

関係性の構築が不十分だと、描画は防衛的で回避的で警戒的なものになります。

そうなるとセラピストも、描画テストの解釈を誤りやすくなるので注意が必要です。

絵を描いた後の会話

描画テストは絵を描いて終わりではありません。描かれた絵について描き手の話を聞くことも重要です。

絵にはクライエントの言葉にならない無意識の自己像が投影されています。会話をとおして、それを言語化・意識化することで、「心理査定」を深めるだけでなく、洞察・浄化といった「心理療法」としての効果も期待できます。

描画後の質問項目が細かく設定された描画テストもありますが、セラピストが質問しクライエントが答える…という形よりも、絵をともに味わいながら、クライエントが自由に話せるような雰囲気作りが大切です。

描画テスト【おすすめの本】

描画テスト描画テスト(高橋依子)
投影描画法ハンドブック―絵によるパーソナリティ理解 (有明双書)投影描画法ハンドブック(赤坂澄香)
樹木画テスト樹木画テスト(高橋雅春、高橋依子)

参考文献・おすすめの本

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高橋依子、牧瀬英幹/描画療法のさまざまな実践について、章ごとに1つずつ徹底解説。適応の見極め、導入の手順、描画の解釈などの基本的な進め方、細かい工夫や注意点などを、事例をあげながら具体的・実践的に説明する。