意識と無意識

無意識とは

無意識とは脳内の記憶としては存在するけれども、本人が意識できない領域です。心の領域を「意識」と「無意識」に分ける理論は、フロイトが提唱しユングが発展させました。

無意識という領域の発見がフロイト最大の功績であり、その後の心理学を大きく発展させたのです。

フロイトが考える無意識

フロイトは無意識を「意識してはいけないものを閉じ込めておく領域」と捉えました。

かなえられない欲求・耐え難い悲しみ・受け入れられない暴力性など、ずっと意識していると本人の心が耐えられないような負の感情を、無意識領域に閉じ込め忘れ去ろうという仕組みです。

フロイトは精神病を、この無意識に閉じ込められた負の感情が暴れだすことにより生じると考えました。よって精神病の治療法として、無意識に閉じ込めた感情を意識化するという方法をとりました。

無意識の感情が表れやすい「夢」を分析したり、自由連想という方法で過去の記憶を引き出していったのです。

しかしフロイトは、精神病の原因の多くを性的欲求と結び付けていたため、ユングなどの多くの弟子が離れていくことになりました。

ユングが考える無意識

ユングはフロイトが提唱した無意識の概念を指示してはいましたが、無意識をもっと広い意味で捉えていました。

フロイトが無意識を「負の感情を閉じ込めるゴミ箱」のように考えていたのに対し、ユングは無意識を「人類の歴史が残る宝庫」のように考えていました。

ユングは無意識の中には個人の感情の他に、全人類に共通するイメージも眠っていると考えました。(※人類どころか宇宙にまで共通する領域だとされていますが、話が飛んでしまうのでここでは触れないでおきます)

夢や神話・宗教など、世界中の至る所で共通するモチーフがあり、代々受け継がれているのはみなに共通する普遍的無意識があると考えたのです。

ユング心理学の精神病治療では、個人の感情だけでなく、イメージを広げることを重視します。過去の感情を分析するのではなく、患者本人が自分の心の中で起こっていることを意識化し、表現することが治療につながるとされています。

箱庭療法をはじめ、現在のアートセラピーには、ユング心理学の無意識の考え方が大きく影響しています。

無意識とアートセラピー

無意識が現れやすいものとして、夢やアートがよくあげられます。夢は見るのも本人・内容を語るのも本人という客観性にかける部分があり、研究をしにくいというのが正直なところです。

一方アートは、表現したものを客観的に見ることができ、見るたびにちがう発見があります。

ロールシャッハテストや家族画などのように、心の分析を主目的としてアートを使うもありますが、アートセラピーで描く絵は、絵の分析が目的ではなく、表現すること自体がセラピーだということを忘れてはいけません。

描き手はアートを表現することにより心の動きを感じます。しかしその感覚はモヤモヤとはっきりしないものかもしれません。セラピストは表現されたアートを「きっかけ」にして、心や感情のイメージを膨らませ具現化していくための語りかけをする役割だと私は考えています。

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高橋依子、牧瀬英幹/描画療法のさまざまな実践について、章ごとに1つずつ徹底解説。適応の見極め、導入の手順、描画の解釈などの基本的な進め方、細かい工夫や注意点などを、事例をあげながら具体的・実践的に説明する。